キャンプで最もやりたいこと。キャンプの醍醐味といえば料理。素敵な自然に囲まれて出来立ての料理を食べたい。早速お気に入りのショップ「エルブレス」にいき、キャンプ料理に必要な道具を聞くと「バーナー、ガス、クッカー(調理する鍋と蓋)ですね」と教えてくれた。
悩む私に店員は「日本は好きすか?」と聞いてきた。
今までの自分の人生を振り返った時、日本に生まれてよかったと思った時は確かにあった。しかし、「俺って日本が好きだなー」と言ったことがあっただろうか。戦後日本の国際関係上の立ち位置、他国に対するODA(政府開発援助)、イマイチ信用できない与党と情けない野党、低い女性の社会進出率…。果たして日本が好きと心から言えるのか。悩む私に店員の方が優しく言った。
「プリムスはイワタニ。モンベルは大阪の会社。日本のメーカーもいいすよ」
物事を大げさに考えてしまうのは私の悪い癖なのだ。店員は続けて「クッカーはいろいろな種類のものがありますが、モンベルのクッカーに四角いものがあり、これは珍しいですよ」と説明してくれた。購入を決めた一言は「チーフYさんのようにリュックひとつで行動する人は、スタッキング(リュックに綺麗に納める)に良いすよ」と教えてくれたからだ。
その日はプリムスのバーナーとガス、モンベルのクッカーを買って初めてのキャンプ料理を考えた。キャンプ料理で悩むのは食材のカット。実際にキャンプ場に行き、包丁を出してカットするのはまだハードルが高い。悩んだ私が考えたのはほうれん草と卵とベーコンのソテーと舞茸のスープ。ほうれん草を取り出し、全てカットすると大きなジップロックがパンパンになる量になってしまった。
こ、これを料理できるのか。全くやったことがない世界に足を踏み入れる時はいつも勇気がいる。サイボーグ009はいつも私に「あとは勇気だけだ」と教えてくれた。全ての食材をカットし、翌日いつもの河原へ。
ジップロックからほうれん草を取り出し、全てクッカーの中へ。おお!料理をしている!なんだかわからないけど、ほうれん草が溢れるくらいのスケールが大きい料理を俺はしている!俺はスケールの大きい男だ!。何事も前向きに考えられるのが私の少ない長所である。
初めてのキャンプ料理は成功した・・・ように見えたが、まだテントもタープ(幌)も使えっていない私。当然ながら他のキャンパーからは“逐一行動が丸見えのほうれん草大食い野郎”にしか見えていないのだった。