現実逃避から始まったチェアリングがあらぬことから拡大し始めた。会社で使うリュックにダメージがあり、新しくせざるを得ないからだ。次に購入するリュックは仕事と趣味の両方で使えるもの、と決めていた。
お気に入りのショップ「好日山荘」に行き、「軽くて丈夫で、物がたくさん入り、物がたくさん入りすぎない、何よりも上級者と思われるリュックをください」と素直に伝えた。素直は私の唯一の取り柄と言っていい。怪訝な目でこちらを見つめる店員は一瞬たじろむも、私にこう言った。
「マンモスはお好きですか」
これが私のメインリュックになる「マムート」との出会いだった。
マンモスは好きかと聞かれても、思えば今までの人生において「俺ってマンモス好きなんだー」と言った記憶はない。悩む私も「上級者に見えますよ」の一言で膝をつき、「モテますよ」の一言で財布を開いた。
ちょうど良い30Lサイズ(テントを使わない登山やチェアリングなどの簡易キャンプ向け)のマムートデュカンは背中に鉄骨のような骨組みがあり、これが素人の私には「どんなに重い荷物でも俺が守ってやっから!」と語りかけてくれているようで安心した。これならリュックひとつでどこにでもいける。そうだ!、これからはリュックひとつでできるキェンプをやろう。持ち物はリュックに収まる分だけにして、自分の荷物は自分で運ぶキャンプをしよう。車で運ぶのではなく徒歩で。
始まりは仕事から離れることだった。恥ずかしいこともやましいこともない。でも割り切れない何かが心に引っかかっているのかもしれない。そんな私は、きっと上手に逃げることに慣れていない。